嬉しい一言
寒くなってきましたね。大間沖のマグロも脂がのって最高の時期がやってきました。漁師さんはハンパない荒波をものともせずに、沖へ向かいます。
さて、先日とても苦労した症例がありましたので・・・。歯科医院から頂いた画像がこちら。A2・C1・D2のシェードタブを選んでいるあたりから難しい色調である事が伝わってきます。
隣の歯もセラミッククラウンのようです。”他の技工士さんが作った物に色を合わせる”という仕事も独特な難しさがあり、しかもシングルセントラル(真ん中1本だけの症例)ですから、苦労しそうです。こういう症例が最も難易度の高い仕事になります。1回目で色がバッチリ合う事はまずないので、試適(途中で色の確認や噛み合わせのチェックの為に患者さんに来院してもらう事)をしながら、だんだん色を似せていくのが確実な方法です。
シェードタブがかなり手前にあるので、目標歯となるクラウンがとても暗く見えるのですが実際はそこまでグレーじゃないかも・・・。予想と勘を頼りにクラウンを製作して、シェード写真を撮りに行く事にしました。
歯頚部が隠れてしまいましたが・・・。だいぶ白くずれていました。(肉眼だと、さらに白く見えます)ただA2よりも明るいエリアがあったり、透明感の印象が違ったり最初の画像と肉眼では大きな違いが確認できました。
表面のフワ~としたホワイトステインが特徴的です。患者さんは歯と歯の付け根の隙間(ブラックトライアングル)が以前から気になっていたようでしたので、歯の形を少し膨らませて歯肉を押す事を試してみる事にしました。あとはオレンジ色を少し足して透明感のあるエナメル色をのせれば良い。と思い製作してみたのですが・・・・・やりすぎてしまいました。
まず付け根の歯肉を圧迫しすぎて強く変色しているので良くないです。形のバランスまでも犠牲になっています。色調も全体的に赤・オレンジ色が強すぎて明らかにマッチしていません。
完全にブラックトライアングルを消す事は困難かもしれないという事を説明し、もう一度チャンスを頂きました。次は失敗できません。3回目ですからね。
ん~ちょっと白かったなぁ~とドキドキしながら鏡を渡すと・・・
患者さん:「あれ?入れたのどっちの歯でしたっけ?」
技工士にとってこれほど嬉しい言葉はありません。涙が出そうでしたよ(笑)。
白枠の部分を切り抜いて反転させてみると少し色相がずれているのが判ります。さほど違和感を感じないのは、明度がまあまあ近かった為だと思われます。
患者さんには満足して頂けましたのでセットする事ができました。何度も足を運んで頂きありがとうございました。
技工士の提案に耳を傾けて、患者さんに丁寧な説明をしてくださった先生。毎回、シェードテイク・写真撮影のサポートをしてくださるスタッフの皆さん。どうもありがとうございました。